【第24回 数学カフェ】実験数学 に参加してきました。

3/10(土)に開催された【第24回 数学カフェ】実験数学 に参加してきました。

connpass.com

会場はPreferred Networks社。前回に引き続き、です。今回は土曜日だったので大手町ビルの地下一階からさくっと入場することができました(正門からも入場できたみたいですが) 講師は明治大学教授矢崎成俊教授です。明治大学の数学科(生田キャンパスにあります!)に在籍してらっしゃいます。

矢崎先生のホームページ。

Shigetoshi Yazaki

今回は、プロジェクターと紙とペンだけでなく、、、ナプキンやこま、はりがね、リステリンなどいろんなものが飛び交う会になりました。

講演の内容

自分が撮った「こま」の写真。このコマ、逆さまにした状態で回し始めてしばらくするとこれが直立した状態で回るようになります。。。 f:id:maestro_L_jp:20180313233451j:plain

まずは自己紹介

矢崎先生の自己紹介タイム。いろいろ時代を感じさせるようなものが出てきて懐かしさを感じました。 饒舌な先生でいい感じの印象でした!

挨拶がてらペットボトルとリステリンの中にいっぱいの水と空の醤油差しが入ったものを渡され、これを使った「醤油差しの浮き沈み」の実験をやりました。もともと浮いていた醤油差しを鎮めるのにはペットボトルを押せばOK。しかし、もともと沈んでいる醤油差しを浮かせるには…?どうすればよい?という謎を残しつつ次の話へ。

この段階の自分の読みは…リステリンだけ考えると、「細長い楕円にすると沈む」ということは「円に限りなく近づけると浮くのでは?」というもの。円に近づけば近づけるほど浮力的なものが働くなのかなというもの。

そして、次に起き上がるコマとか回り続ける葉っぱのおもちゃとかの紹介。この段階で結構盛り上がっていました!

本題、シャボンの懸垂面の実験。

本日のメイントピックの一つ。石鹸膜を作るための液体と二つの円状の針金を使ってカテノイド(懸垂面)の作成の実験。液体の作り方の比率とか解説してくださっていました。

この写真は液体です。 f:id:maestro_L_jp:20180314005009j:plain

丸い針金の丸く成型された部分を液体につけて話すと丸い部分のところに膜が! f:id:maestro_L_jp:20180314005014j:plain

これをもう一つ作り丸い部分を重ね合わせます。そして、ゆっくり離していきます!そうするとカテノイドが綺麗にできます。(しかし、これ、力入れすぎるとすぐこわれちゃうんだよね。。。) youtu.be (@naokiring さん動画撮影してくださりありがとうございます!)

ちなみに円でなくても三角形・四角形に針金を変形してもうまくいくんだって(自分はハート側にやってみてうまくいかず轟沈していましたが。。。)

こういう実験の話をしたあと、本格的な数学の話に突入します。

そうそう、実はこの日小学生も参加されていて普通に虚数とか微分の概念理解している子でしたよ!(将来有望ですね。)ただ、数学科の学生レベルできちんと話についていけるかは不明だったので先生もかなりゆっくりめなペースで話されていました。

懸垂面の話に関連した「懸垂線」の話。方程式の導出と解。

まず、両端を固定した時に紐の垂れ方がどういう曲線を描くかというところから解説(実はこの辺りの知識が、カテノイドの方程式を導き出すのには有効だったりします)です。 ここでの気づきは  \cosh (x)  \sinh(x)がなぜ「hyperbolic」って呼ばれているかということ。  \cosh^{2} (x)  - \sinh^{2} (x) = 1 が成り立つことを考えると予想できるひとは予想できるんでしょう。そう、原点と双曲線の囲む面積が \frac{ \theta } { 2 } になるような点の座標は何?的なところからきているとか…。(そういう捉え方もありますよー的に捉えていただけると。。。。)

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で、懸垂線の方程式を求める。条件としては2点の紐の端を固定した時の紐の位置エネルギーが最小となる紐の曲線を求めればOKということ(すみません、そもそもなんでぶらさがった紐の特徴としてなぜ「位置エネルギーが最小」が含まれるか教えてくれたら幸いです)で、この図をベースに方程式を導きだします。この辺りは数学というよりは物理です。

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何やかんやして定式化した問題は

「以下の条件(長さ一定の条件)

$$\displaystyle L(f) \equiv \int_{ a }^{ b } \sqrt{ 1 + (f'(x))^{2} } dx$$

を満たす関数  f : \lbrack a, b\rbrack \to \mathbb{ R } の中で

$$\displaystyle E(f) \equiv \rho g \int_{ a }^{ b } f(x) \sqrt{ 1 + (f'(x))^{2} } dx$$

が最小となるものを求めよ。」

(あ、ここでは数学的に超厳密にはやっていません。あくまでイメージとアイデアを伝えるのが目的なので。それにがっつり L^{2} 空間とか定義しだすと本当に1週間では終わらなくなる。変分問題のテキストを予習会で読まないとまずいレベルになる。MountainPathとか。)

こちらですが、測地線関連の予習会出ている、または真面目に測地線の具体的な計算(簡単な例でもいい)を計算したことある人ならわかる通り、「変分問題」を「常微分方程式の問題」に焼きなおします。オイラーラグランジュの方程式に焼き直す操作のことをいうんですけどね。(物理でいうと、仮想仕事の原理的な世界から普通の力の比較などの世界に焼きなおしましょう・・・でしょうか。間違っていたらすみません)

がっつりした計算は変分問題の教科書もしくはEMANの物理学のこのページ

EMANの物理学・解析力学・ベルヌーイの問題提起

を参考にしてもいいと思います。

汎関数を関数について「微分」をして、最小性の特徴・定数の特徴を使うと以下のように変形できます。

  k(x) \equiv \frac{f''(x)}{( 1 + (f'(x))^{2})^{3/2}} とおき(実はこれ曲率)、 F(x) \equiv \frac {1 - f(x) f''(x) + (f'(x))^{4}} {( 1 + (f'(x))^{2})^{3/2}} と置くと、、、

$$\displaystyle \int_{ a }^{ b } F(x) \phi (x) dx = 0 $$

$$\displaystyle \int_{ a }^{ b } k(x) \phi (x) dx = 0 $$

になります。ただし、 \phi(x) は端点で0をとるtest functionになります。

ここで L^{2}とか仮定していないですが…正規直交基底の考え方とか使って積分微分方程式の形に焼きなおしていました。ちょっと聞いていた時はギャップを感じていたところですが、今冷静になって考えるとなるほどと思うところでした。

それですが、、、2つ目の積分方程式(曲率を使った部分)をよく見るとこれは、(1)「 \phi は曲率 kと直交しないといけない」という条件がつきます。「もし Fkと(1)を満たす \phiたちから構成される完全正規直交系の和でかける」としたら、この \phiを使った条件、1つ目の積分方程式から実は F kの定数倍でかけることがわかります。

なので、微分方程式

$$ F(x) = - \lambda k(x) $$

を解けばいいことになります。これを地道に解いていけば解答は

$$ f(x) = A \frac { e^{ \alpha x } + e^{ - \alpha x }}{2} $$

になることがわかります。

これを小学生にもわかりやすく解説していました。

同じような定式化・解き方でカテノイドの方程式も導出できるとか。(俺の予想だと、円が出て来た段階でグラフの形で解き進めていくのはこんなんだと思われます。。。)

アメーバ。ヘレ-ショウの流れ。

最後は、アクリル板2枚と絵の具を使ったヘレ-ショウの流れを体感する実験。これも実は数学的な面白い方程式が眠っているのですが、ここでは実験にだけフォーカスを当てる。アクリル板に絵の具をちょっと添えてもう一つのアクリル板で潰して手を離すと、以下のような模様ができます。

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この模様にも数理モデルが存在して…この辺りはちょっと理解しかねたのですが、ナヴィエストークス方程式とか絡むみたいです。

総括。

総じて楽しかったです。みんな能動的に手を動かしてその世界観にどっぷり疲れてたのがよかったと思います!

今回は数学的な中身でハードルの高いのは一切なかったように思えます。そういう意味ではわたし的にこれまでの数学カフェの中で一番わかりやすく持ち帰りやすい内容だったんじゃないでしょうか!(僕もこういう講演をいつかやってみたいですね)

言葉で語るよりもこういうのは参加するのが一番ですよ。本当。ライブDVDでは味わえない一流アーティストのライブみたいに。

最後にいくつかの喜ばしいサプライズがありました!僕は何もできませんでしたがとにかくおめでとうございました!!